生酛を極める 生酛純米酒の醍醐味は、「旨味」

生酛純米酒の醍醐味は、旨味 第九話【純米酒の選び方】

世界の食文化の中で日本酒の存在価値は、
      豊かな「Umami」を有する世界唯一の酒、
           これを最大限に引き出せるのが
「生酛造り」である。

生酛造りの特徴は、発酵力。

お米のデンプンをブドウ糖に変え

たんぱく質をアミノ酸(旨味成分)に

しっかりと変える発酵力が他の製法と格段に違う。

それは、酛摺と言う生酛造り独特の工程がある事と

糖化やアミノ酸にする、「米麹」の質と量が全く違う。

米麹の質と量について

生酛造りにおいて米麹は、「総破精(そうはぜ)型」

使うのが通常。

速醸酛造りでは、「突き破精型」を使うのが一般的。

そもそも米麹の質が違う。

「総破精型」米麹

100㎏の米に対し100gの種麹を使用

麹室 室温30℃未満 湿度60%

48時間が基本。

菌糸は、水分に向かって成長していくので

内側にも外側にもまんべんなく

菌糸を生やすために湿度が大切。

時間と手間をかけ、菌糸を付けていく。

 

一粒のお米の核にでんぷん、

その周りにたんぱく質、

両方に菌糸がしっかりと生やし、

菌糸が突き進む為に、細かく砕き分解をする酵素を出す。

その場所が、でんぷん分部であれば

「アミラーゼ」と言う酵素、

デンプンをデキストリンに分解、

もっと細かくしてブドウ糖。

菌糸がたんぱく質に伸びる際に

細かく粉砕、分解をさせる酵素が、

「プロテアーゼ」

ペプチドに分解し、更に細かくアミノ酸に

分解させる

これら、両方の酵素が出せるのが総破精型米麹。

すなわち、

核のデンプン部分に菌糸が生えれば

でんぷんを分解する酵素「アミラーゼ」を持ち

たんぱく質の部分に菌糸が生えれば

たんぱく質を分解する酵素「プロテアーゼ」

造られる。

「突き破精(つきはぜ)型」米麹

100㎏の米に対し5~50gの種麹を使う

麹室 室温 35℃以上 湿度 25%

60~70時間

お米の表面を乾燥させ、お米の内側の水分に

向かって菌糸を付ける。

種麹の量により菌糸の付き歩合を調整する。

内側のデンプンの部分に多く菌糸が生えた形

でんぷんを糖化させる酵素「アミラーゼ」を出せるが、

たんぱく質をアミノ酸に変える酵素は弱い。

「菌糸の付き具合」

蔵元様では、「何分付き」と表現しますが、

10分付で、100%お米に菌糸が

しっかりと生やす基準です。

 

米麹は、

「酒母、醪(もろみ)の初添え、中添、留め添え」

4回投入します。

ある生酛蔵様では、総破精型米麹を全体に使い、

「酒母工程、酛摺の時に10分付」

「醪工程、初、中添えで8分付」

「醪工程、留め添えで6分付」を使います。

ある蔵元様では、総破精、

「酒母から留めまで、

12分付(120% 100キロの蒸し米に対し120gの種麹)を使っています。」

菌糸の付き歩合を上げるとそれぞれの酵素が多くなり、

糖化やアミノ酸生成をしっかりとしてくれます。

お米の特徴を十二分に酒質に生かせます。

しかし、味が多くなりくどさを感じる方もいらっしゃいます。

麹室は、一部屋が通常

酒蔵様では、米麹を造る部屋(麹室)は

一部屋がほとんどでしょう。

そもそも、総破精型と突き破精型の設定が

全然違うので造り分けるのは至難の技。

ましてや、最近生酛造りを

始めた酒蔵様が多いですが

速醸酛寄りの生酛を造られます。

それは、突き破精型を中心に酒造りを

されているので、しょうがないと思うますが、

この突き破精型を中心の酒造りだと

生酛造りの手間暇かけても、速醸酛のお酒の方が

美味しいと思う事でしょう。

私は、速醸酛造りも素晴らしいお酒造りだと

思っております。

生酛造りの最大の特徴は、転換力、発酵力です。

米麹の酵素を最大限に生かし、お米のポテンシャルを

最大に活かせるお酒造りは、生酛造り以上に無いと

思っています。

生酛は、速醸のデータでお酒造りをされても

あまり力を発揮しないのではと思います。

しかし、生酛造りを突き詰めていくには

相当な年月と経験もそうですが

突き破精を総破精に変える

相当な決断が必要となります。

生酛の銘柄が増えている背景

生酛造りとは言え、

酛摺の後、人工乳酸を添加したり、

糖化酵素を入れたり

上槽(お酒を搾る事)の後に、

香り系の速醸酛の酒とブレンドしたり

純米生酛が注目されつつある昨今、

生酛純米酒の種類も格段に増えるにつれ

「生酛は、出来るだけ薬剤に頼らない純米酒」とは

言えなくなっているのが現状です。

それを、判断するのは、飲み手の皆さま、

飲んだだけでは、わからないのが当然です。

機会があれば、蔵元様や酒販店様、

店舗様に聞いて見て下さい。

1「この純米酒は、米麹歩合は、何十%使っていますか?」

2「米麹は、総破精それとも突き破精?」

3「破精は、何分付?」

4「上槽時のアルコール度数は?」

5「汲み水は、何百%?」

これらの事から、蔵元様がどのようなお酒を

目指したかが全てわかります。

総破精型米麹

手間とコストがかかり

でも、それをあえて造り使うという事は

しっかりと酵素を出し、原料のお米の個性や

特徴を引き出し天然発酵、それに近い酒造りを

目指す蔵元様の志が、伺えます。

純米酒に何を求めますか?

現代の最高峰の技術を使い

エレガントでリッチなアロマな純米酒

(酵素力を落として、アレンジしやすく)

それても、

自然な力の発酵を見守り

余計な手を加えない純米酒

(酵素力で分解、発酵をさせたい)

これらの純米酒の選び方

米麹の量

米麹歩合18%以下は、米麹が出す酵素が弱く

糖化酵素を入れる割合が多くなります。

米麹歩合を上げれば、米麹の持つ酵素で

自然に分解をさせたいと意思がわかります。

米麹の質

総破精型は、手間暇とコストがかかりますので

薬品を使う純米酒を造るプランだったら

使いません。

突き破精型でも種麹も少なくし、酵素力を

あえて落とします。

米麹歩合を20%使っても

突き破精型の4分付き程度にして

酵素の力よりは薬品の力でお酒を造り、

アレンジをしやすくしていきます。

要は、

「米麹の量と質」を聞けば

どのような純米酒かが

あり程度、把握できるのです。

江戸時代の酒造りに注目

「生酛造り」が見直されております。

その理由は、天然発酵が出来る

酒造りだからです。

しかし、お酒の瓶に「生酛」と表示する

明確なルールがなく、酒蔵様に任さてれいます。

生酛造りとは言え、薬品を使った生酛も

当然あります。いや、薬品を使わない方が

少ないかもしれません。

私は、薬品を否定するつもりはありません。

しかし、薬品になるべく頼らない、純米酒の

素晴らしさを知ってから、生酛造りに注目を

してまいりました。

平成から令和へ

かつて、江戸から明治へ激動の時代の酒が

生酛造りの日本酒だった様に

元号の変わったこの時に

「生酛で一献」いかがでしょうか

生酛一筋10年
料理人店主 おさむ

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