【生酛の弱点】未来へ世界へ

【生酛の弱点】未来へ世界へ No.1-1 山卸(酛摺)

皆さま、旨い純米酒飲んでいらっしゃいますか。

生酛一筋14年 料理人店主 おさむ です。

飲み手の皆さまが、情報を知り

蔵元さまの情熱を受け取り生酛造りをお選び頂き

ご愛飲し応援される事が全てで、何より素晴らしい事です。

生酛造りの独特な作業

この画像の作業が、「山卸(酛摺もとすり)」と言い、

この酒母の建て方の酒造りを押さえておかなければなりません。

上の画像は、本流生酛(古式)古から続く

伝統的な「山卸(酛摺)」作業の様子です。

木製の半切り桶と蔵人たちが手にしている物が、櫂(かい)です。

この作業の際に「酛摺唄」を歌いながら行います。

息を合わせる事とタイマーが無い時代ですから

作業の長さを合わせ摺り卸かげんを判断し

必要とあらば延長したりします。

「今年の米は解けにくいな、もう一回摺るか」など、

おやあっさんの掛け声、杜氏の経験が左右する作業でもあります。

この作業をする意味は、もちろん色々ありますし

わからない事も沢山あります。

山卸(酛摺)の役割

発効促進、濃糖圧迫の抑制

そして、好気性細菌優勢培地状態にするです。

難しい用語が並んでしまいました。

ごめんなさい。

本流生酛(古式)

実は、この山卸(酛摺)をする前にあまり表に出てかない作業があります。

それが、「埋け飯(いけめし)」「手酛(てもと)」作業です。

この作業をする生酛造りを本流生酛としました。

なぜなら、生酛蔵の蔵元さまのお話で、

「当蔵は、本流生酛古式の(半切り桶、櫂で酛摺)と山形流生酛(ドリルで酛摺)の

両方をやっていますが、全く酒質が違うね。

ドリルでやる場合は、埋け飯をやると上手く摺れないので埋け飯、手酛はやりません。

山卸(酛摺)自体よりその前の埋け飯、手酛をやるかやらないかで違いが出て来るね」

本流生酛(革新)

そして、別の酒蔵さまは、「埋け飯」をしてから山形流生酛(ドリルで酛摺)を

する酒蔵さまもいらっしゃり、やはり蔵元さま曰く、

「埋け飯は、酒質に影響を与えると考えています。」とのことで

私の勝手な考えで、「埋け飯」作業をした生酛を本流生酛に入れさせて頂き、

古式ではないので、「革新」としました。

生酛造りの未来

私は、この酛摺が、AI、ロボット、自動化が開発され未来の生酛造りに

多大なる影響を及ぼすような気がしてなりません。

稲作が、牛が耕し、人間の手で田植え、そして稲刈りの時代から、

今では自動無人コンバイン、ドローンによる状態管理の時代に進化。

生酛造りも時代に合った進化「変わらない為に変える」と思っております。

本流生酛(伝承)

こちらは、半切り桶に小分けにし、櫂ですり潰すのではなく、

人間が乗って踏みつぶす伝統的な酛摺です。

 

どれが良い、悪いではなく、

飲み手の皆さまが、楽しく飲み比べをしてみたりされて

お好みな方をご愛飲下さい。

「埋け飯(いけめし)」

山卸(酛摺)をする前に、投入する蒸したお米を、広げ数時間かけ冷やす作業

お米をアルファ―化からベータ化させる作業です。

「なんのこっちゃ」ですね。

 

簡単に言うと、出来たての蒸米は、指でつぶすとのり状になるのを

時間を掛け冷やす事で、固いグミの様な崩れにくい状態にする作業です。

 

ここで、広げた事により、空気が好きな菌が付着し、好気性細菌優勢の母酒が造れる事と

そして、ベータ化した蒸し米が、山卸(酛摺)作業をした際につぶれにくく

糖度の急激かつ一定以上の上昇を抑える事かつ、米麹は、水を含むと崩れ

ベータ化してつぶれにくい蒸し米をむらなく覆いかぶさる。

所謂、発酵促進と濃糖圧迫を防ぐこと、櫂でする事で更に空気を含み

好気性細菌優勢の母酒が造れる事が出来るとと

ある蔵元さまは、おっしゃっていました。

 

濃糖圧迫の簡単なイメージは、お正月のお節料理の味付けが正にこれですね。

甘さを基本に強く味付けをする事で、細菌の繁殖を遅らせる昔ながらの知恵です。

 

適度な糖は、菌の餌ですが、多くなり過ぎると菌の繁殖が遅れ

生酛造り独特の、一番最初に亜硝酸還元菌群による亜硝酸反応で雑菌を駆逐し

そして、乳酸菌が入り乳酸発酵しガードのバトンタッチをしていく工程を

遅らせてしまわないように糖度コントロールは、生酛造りの重要な要素です。

しっかりと乳酸でガードされた母酒に酵母菌を添加、もしくは蔵付酵母が入り

後にアルコールを発せさせる優秀な酵母菌が選抜され増殖していく。

正にお酒を産む酛を造る、酒母建てですね。

「手酛」

本流生酛(古式)で、「埋け飯」された蒸し米、水、米麹を

複数の半切り桶に小分けに入れ、手でかき混ぜ、山型に整形し

その後、櫂で山卸(酛摺)作業をしていく。

この「手酛」が、冬の時期で冷たく辛い作業となります。

山卸(酛摺)作業による混合培地

酛摺により、どろどろの状態(ヨーグルトやホワイトシテューの様なイメージ

これほど滑らかにはしませんが、わかりやすく)

これを混合培地と言い、濃糖圧迫抑制、好気性細菌優勢になり、

酸度が上がり、雑菌からガードする力が強く、しっかりとした味にもキレを感じるのは

この酒母の建て方によるのではないかと言われる蔵元さまを何人も聞きました。

分離培地と言えば、山卸廃止酛です。

「埋け飯」「手酛」「山卸(酛摺)」作業をやらない酒母の建て方です。

この一連の作業は、大変重労働で、明治時代の後期(43年)に

温度管理で、一連の作業をしなくても亜硝酸反応、乳酸増殖、酵母増殖の順番で

酒母が建てられお酒が出来る事を発表しました。

これは、蒸し上がったお米を胸の高さぐらいのタンクに入れ水を入れ、

そこに米麹を入れ軽くかき混ぜる。

イメージでは、濁り酒の瓶を振りしばらく置いておくと、

沈殿し、二層別れている状態です。

 

山卸廃止酛は、糖度をコントロールしづらく濃糖圧迫しやすく、

亜硝酸反応が鈍く、硝酸カリを代わりに添加し雑菌を

駆逐させる場合もあります。

空気があまり好きではない嫌気性細菌優勢となり、

酸度があまり上がらない事が特徴で、色々な菌が絡み合い

飲み応えのある酒質になり、それが好みと言われる方が多く

生酛造りより人気があります。

山形流生酛

山卸廃止酛の工程に、ドリルで酛摺をして混合培地にする酒母建てです。

イメージは、ボールに卵白を入れメレンゲを立てる感じでしょうか。

「埋け飯」「手酛」が無いので、蒸し米が溶けやすく糖度コントロールしづらく

好気性細菌優勢になるかどうかも、本流生酛と山卸廃止酛の中間でしょうか。

秋田から京都の日本海側に位置する生酛蔵さまで

この山形流生酛をされていらっしゃいます。

簡易生酛

複数の厚手のビニール袋に蒸し米、水、米麹を小分けに入れ空気を抜き結わき

もんでどろどろ状にしていくそのまま数日置き乳酸発酵を待ち、

協会酵母菌を添加して酒母建てする。

この酒母建ては、最近採用する酒蔵さまが増えて来ました。

私は、これをしている酒蔵さまに1軒だけしか訪問をしたことがないので

勉強不足です。

これから勉強させて頂きます。

酸基醴酛(さんきあまざけもと)

こちらは、「山卸(酛摺)」作業をしない酒母建て

酒瓶に生酛表示がありましたので、酒蔵さまにご連絡しお話を伺った際に

「乳酸は添加しないで、乳酸菌を入れ酒母で増殖させました。」

「この建て方は、蒸し米、米麹、そしてお湯を入れ、糖化しやすい温度に上げ

その糖を乳酸菌の餌にして乳酸発酵を促進するやり方、

いわゆる酸基醴酛です。」とおっしゃりました。

この酸基醴酛は、生酛造りと同じ時代に行われた伝統的な酒母造りです。

勿論、別の酒蔵さまは、酸基醴酛と表記してお酒を販売されております。

 

この酸基醴酛は、温度帯が雑菌も増える温度帯で、しっかりと乳酸が

増殖するまで不安定な酒母になりがちだが、なによりも作業の軽減、

少人数で酒母建てが出来るメリットが多きいいとある蔵元さまが

おっしゃられておりました。

刺し酛

これは、昭和初期までやられていた酒母の建て方、

「山卸(酛摺)」作業の後に、別で人工乳酸を添加して酒母建てした

速醸酛を入れる。

生酛のダイバシティー

色々なお考えで生酛表示された酒母造りのバリエーションがあります。

何度も申し上げて恐縮ですが、飲み手の皆さまが

情報を仕入れ、お好みに合った生酛をご愛飲頂き

応援される事が、全てです。

現代でも現役生酛造り

江戸時代の建物や風景を時代劇ドラマや映画でよく見ますが、

木造建物で密閉、無菌状態とは程遠いイメージですね。

そんな雑菌や酒造りに不必要な菌が無限にある環境で、

腐らず(負造{ふぞう}せず)にお酒になる。

昔、中には負造していまい、蔵に負造菌がまん延し数年は、

酒造りが出来なくなったそうで、蔵元さまや蔵人たちの命がけの

生酛造りっだたそうです。

江戸時代、電気やガス、薬品、微生物の概念がなかった時代に

しっかりとした発酵技術、それぞれの菌が役割を果たしバトンタッチをしていく

世界に類を見ない複雑な酒製法、現代でも十分に現役、

いや優れた生酛造りの素晴らしさそして、蔵人たちの情熱に

今宵も一献生酛で乾杯。

 

質問は何を聞けばいいの?は、

今後に書かせて頂きます。

目から鱗、楽しみにお待ち下さい。

 

話題が過ぎれば見向きもされなくなる興味品から

日々の安らぎに寄り添う必需品に生酛がなればいいな。

令和5年1月23日書

 

化学調味料を避けたい方の為の
天然だし和食専門店 日本酒生酛
ひとしずく
料理人店主 おさむ
当店 https://hitoshizuku6.wixsite.com/roppongi

 

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